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【商標】「微信(weixin)」ドメイン名事件裁決:理解できましたか?

2016-02-19

*原文は知産力により2016年2月19日に公表されたものである

作者:汪正

リンク:http://www.zhichanli.com/article/25595

2016年1月29日に、アジアドメイン名紛争解決センター香港事務局の専門家チームは、香港地域の「微信」、「weixin」登録商標の所有者である騰訊控股有限公司(以下「テンセント公司」と略称する)と紛争ドメイン名weixin.comの所有者であるli mingとの間のドメイン名weixin.com紛争に対して裁決を下した。専門家チームは、原告であるテンセント公司の訴えを支持し、紛争ドメイン名を原告のテンセント公司に移転すると裁定した(注釈①参照)。2015年2月16日に、北京市海淀区裁判所の公式マイクロブログの情報によると、北京将至網絡科技有限公司と李鍵(著者は紛争ドメイン名の所有者及び/又は利害関係者ではないかと推測する)は既に北京市海淀裁判所に訴訟を提起し、原告が紛争ドメイン名を登録し使用したことは故意的ではなく、被告であるテンセント公司の合法的権益を侵害しないことを確認し、原告は紛争ドメイン名に対して合法的な権益を有し、紛争ドメイン名を継続的に有し使用する権利があることを確認することを請求している。「微信」ドメイン名事件は幅広く注目を集めているが、それはテンセント公司及びその「微信」商標、製品及びサービスが現在極めて高い知名度を有するだけでなく、2015年4月にドメイン名weixin.comの取引価格が約3,000万人民元であるとマスコミに報道されたからである。また、2015年の「微信」商標行政権利確定事件に対する激論も「微信」ドメイン名事件を再び人々の注目を集めるようにしている。

商標に対して、ドメイン名紛争仲裁(ドメインネームシステム、ドメイン名紛争解決制度及び規則を含む)は多くの知的財産権業界関係者にとっても新しいものであり、「少数的」実務範囲に属する。ドメイン名紛争の専門家チームによる裁決の文体及び形式も中国裁判所による裁決と異なる。そして、専門家チームが事件を審理する時に準拠することは「独立、中立、利便」の原則であり、一般的に14日以内に裁決することを要求している。そのため、中国裁判所の裁決と比べ、一部のドメイン名仲裁の裁決は論理的、文書の表現においてそれほど厳密ではない。また、「微信」ドメイン名事件の専門家チームにおいて多数の意見を構成する2名の専門家はいずれも香港地域の専門家であるため、引用された一部の規則と先願事例は英語、又は中国語と英語の混合使用、又は大陸の中国語と香港の中国語が混用されている。また、「微信」ドメイン名事件は、更に中国業界でまだ十分に検討と研究を展開していない新しい話題である。ここで、「微信」ドメイン名事件の裁決に対して、理解できましたかと質問する必要がある。

ドメイン名紛争仲裁背景の紹介

21頁にわたる専門家チームの裁決を読む前に、まずドメイン名.COM紛争仲裁の簡単な背景を調べてみる必要がある。

アイキャン(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers、「ICANN」と略称する)はインターネットプロトコル(IP)アドレス空間の割り振り、汎用トップレベルドメイン名(gTLDと略称し、.COM、.NET及び.ORG等を含む)及び国家と地域のトップレベルドメインネーム(ccTLDと略称し、包括.CNと.NET.CN等を含む)システムの管理、及びルートサーバーシステムの管理を行う非営利公益法人国際機関である。ICANNは1999年に≪統一ドメイン名紛争処理方針(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy、「UDRP方針」と略称する)を制定している。同時に、ICANNは世界範囲で複数のドメイン名登録業者(例えば、Civilink、Go Daddy等)を指定し権限を付与した。ドメイン名の所有者はドメイン名登録業者にドメイン名登録を出願する時、「UDRP方針」の制約を受けることに合意しなければならない。

「UDRP方針」第4条「強制的な行政手続き」には、紛争ドメイン名による強制的な行政手続きの解決手続きはICANNにより指定されたドメイン名紛争解決機構により行うと規定されている。ICANNは相次いで世界知的所有権機関(World Intellectual Property Office、「WIPO」と略称する)、全米仲裁フォーラム(National Arbitration Forum、「NAF」と略称する)及びアジアドメイン名紛争解決センター(Asian Domain Name Dispute Resolution Centre、「ADNDRC」と略称し、香港事務局、北京事務局、ソウル事務局及びクアラルンプール事務局を含み、中国業界関係者が常に接する香港事務局と北京事務局はそれぞれ中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)、香港国際仲裁センターHKIACと共同で事務を行う)及びチェコ仲裁裁判所のインターネット紛争仲裁センター(Arab Center for Domain Name Dispute Resolution、「ACDR」と略称する)等の四つのドメイン名紛争解決機構を指定している(注釈②参照)。上記ドメイン名紛争解決機構は、社会から業界において高い権威と信用を有する一部の、学者、判事、弁護士及び企業法律顧問を含む専門家から選ばれ専門家リストを構成している。

「UDRP方針」以外に、ICANNは更に《統一ドメイン名紛争解決方針の手続き規則》(「UDRP規則」と略称する)を制定している。また、各ドメイン名紛争解決機構は、社会の公衆と専門家チームが先例を引用できるように、その専門家チームによる裁定をすべてオンラインで公表している。最後に、WIPOは専門家チームを構成し「UDRP方針」に適用される一部の「共通性」を有する問題を取りまとめ、《WIPO専門家チームの一部のUDRP問題に対する見解に関するWIPOの概観》(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions、《WIPOの見解》と略称する)を形成した(注釈③参照)。また、ドメイン名.COMに対する訴えが仲裁専門家チームに支持されるためには、同時に「UDRP方針」第4(a)条に規定の3つの要件を満たさなければならない。即ち、第3者(原告)が資格のある紛争解決機構に以下の請求を提出する時、被告(ドメイン名の所有者)は該強制的行政手続きに従う義務がある。i)紛争ドメイン名が原告の権利を有する商品商標又はサービス商標と同一又は紛らわしく近似する。そして(ii)被告が紛争ドメイン名に対して権利又は合法的な利益を有しない。そして(iii)被告はドメイン名の登録と使用に故意がある原告は行政手続きにおいて上記3つを同時に具備することを証拠を挙げて証明しなければならない。

「微信」ドメイン名weixin.com事件において、首席専門家と1人の協力専門家が主要意見を構成し、紛争ドメイン名を原告に移転すると裁決、もう1人の協力専門家は少数意見/反対意見(the dissenting opinion)を提出し、訴えを却下する意見を出している。少数意見と主要意見の主な相違点は、「UDRP方針」第4a(ii)項に規定のドメイン名の所有者の合法的利益及び第4a(iii)項に規定の登録と使用の故意この2つの要件にあり、特に、ドメイン名の所有者の合法的利益にある。著者は、「微信」ドメイン名事件の最も中心となる紛争の焦点は、紛争ドメイン名の「譲渡」を初期登録とは別の「新規登録」と判定すべきか否か、それにより紛争ドメイン名の所有者が合法的権利を獲得する時間基準点を決定し、原告の商標登録日と照合し、最終的に紛争ドメイン名の所有者が紛争ドメイン名に対して合法的な権利を有するか否かを決定することにあると判断する

要件1:紛争ドメイン名は原告の権利を有する商品商標又はサービス商標と同一又は紛らわしく近似する

原告の主張:ドメイン名登録情報のWHOIS登録によると、紛争ドメイン名は2000年11月21日に登録され、2015年4月又は7月に現在の登録者li mingの名義に移転されている。「WIPO見解」第3.7条に基づくと、ドメイン名登録者の移転は新規登録と見なされるべきである。そのため、被告が紛争ドメイン名の所有権を獲得した日付は原告が「weixin」、「微信」の香港商標を獲得した登録日 (2011年10月25日)より遅い。

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7号

被告の反論:原告の香港での「weixin」、「微信」商標の出願日及び登録日はいずれも紛争ドメイン名の登録日(2000年11月21日)より 遅い。「weixin」は原告の「微信」だけに対応するものではなく、その他の一般的な中国語単語、例えば「唯心」、「威信」、「維新」のピンインでもある。

専門家チームの裁定:《WIPO見解(第1版)》第1.4条に基づき、第4a(i)項に規定の要件1について、専門家チームは、紛争ドメイン名が事前に登録されていたことを理由に、同一又は紛らわしく近似するとの答弁としてはならないと合意した。即ち、「原告が商標権利を獲得する前にドメイン名を登録したことは、専門家チームが同一又は紛らわしく近似するとの判定を下すことを阻止することはできない。「UDRP方針」では商標所有者の権利を獲得する日付を明確に言及していない。」(注釈④参照)。

「同一又は紛らわしく近似する」に対して、専門家チームの意見は一致している。最も中心となる紛争は「UDRP方針」第4a(ii)項に規定の要件2に集中している。即ち、ドメイン名の初期登録日(2000年11月21日)、ドメイン名の譲渡日(2015年4月又は7月)及び原告の商標登録日(2011年10月25日)の間の日付順の問題である。

要件2:被告は紛争ドメイン名に対して権利又は合法的な利益を有しない

「UDRP方針」第4c条に基づくと、ドメイン名の所有者(被告)は以下3つの証拠に基づいて第4a(ii)項に対して被告が紛争ドメイン名に対して権利又は合法的な利益を有すると答弁し証明することができる。(i)紛争に関する通知を受ける前に、ドメイン名の所有者は製品又はサービスを提供する過程において該ドメイン名又は該ドメイン名に対応する名称を善意に使用し又は善意で使用しようとしていたことを証明できる場合。或いは(ii)ドメイン名の所有者(個人、ビジネス会社又はその他の組織として)が商品商標又はかかるサービス商標を取得していないが、所有するドメイン名が周知である場合。或いは(iii)ドメイン名の所有者が該ドメイン名を非商用的に合法的に使用又は合理的に使用しており、商用的利益を獲得するために消費者を誤解させ又は紛争商品商標又はサービス商標を損害する意図がない場合。

被告の反論:被告は「UDRP方針」第4c(i)項のみを主張する。具体的な理由は以下のとおりである。1)2015年12月3日に訴えを通知する前に、被告は以前から紛争ドメイン名の指向するウェブサイトを微調整し、例えば、ウェブサイトの左上方の図形に「非公式」という単語を追加し、区別できる標識の追加を希望していたため、故意はない。そのほか、被告はウェブサイトの下方にウェブサイトの著作権は「北京将至網絡科技有限公司」に属すると明記し、同時にウェブサイトは「テンセント微信といずれの関係もなく、テンセント微信の公式サイトでない」と表明している。2)紛争ドメイン名の登録日は2000年11月21日であり、原告「weixin」、「微信」商標の登録日及び「微信」製品の発売日よりはるかに早い。

専門家チームの判定:専門家チームは、裁定において「既に善意的に使用」の「既に善意的に」に太字を利用して強調している。

まず、被告の免責事項に対する反論について、専門家チームは下記のように裁定している。「WIPO見解(第1版)」第3.5条は「その他の要因により被告の故意を証明する場合、被告の免責事項の存在はその故意を取り除くことができない。免責事項は逆に被告は事前に原告の商標を知っていたことを証明する。」と指摘している(注釈⑤参照)。そして、WIPO法律索引(legal index)の関連する部分の一致した意見に基づき、「UDRP専門家チームはネットワークユーザの「初期趣味に対する混同」可能性の問題においてこれに対し典型的な解釈をしている。」(注釈⑥参照)。被告の反論は、逆に被告は紛争ドメイン名を登録する時(著者の注釈:即ち、紛争ドメイン名の譲渡を受けた時)に既に原告の商標を知っていたため、「故意」を構成し、紛争ドメイン名/ウェブサイトを「善意的」に使用していないことを証明している。

また、被告が紛争ドメイン名に対して該ドメイン名を登録する時に発生した権利又は合法的な利益を有するとの反論について、専門家チームは「WIPO見解(第1版)」第3.7条に、「ドメイン名が第3者に譲渡されたことは、新規登録である。しかし、ドメイン名に対する更新を行っただけで、故意登録の意義でのドメイン名登録と認定するという意味ではない。ドメイン名の故意登録は現在のドメイン名登録者が該ドメイン名を取得する時に発生したものでなければならない。」と記載してあることに注目した(注釈⑦参照)。そのため、被告が紛争ドメイン名の譲渡を受けた期間(2015年2月から4月までの期間、2015年7月10日又はそれ以前)は、ドメイン名の登記/登録時期と見なされるべきであり、新規ドメイン名として登録(WIPO第D2007-0062号事件参照)されたため、被告がドメイン名を登録した日付は原告の商標登録日より遅い。

専門家チームの少数意見は以下のように判断している。「合法的な権利」の問題について、「UDRP方針」に挙げられたものは「共通性」を有する場合である。「WIPO見解」又は先例が「譲渡」を「新規登録」と認定したことは条件付きであり、即ち、紛争ドメイン名の登録は明らかに故意がある(例えば、他人の著名商標又は商号をドメイン名に登録し、被告が簡単に「譲渡」で原告の「合法的な権利を有しない」又は「故意に登録した」との主張に対抗すること)。

要件3:被告のドメイン名に対する登録と使用は故意がある

原告の主張:まず、紛争ドメイン名のウェブサイト(www.weixin.com)は原告「微信公式アカウント」の情報プラットフォームのように見える。該ウェブサイトの複数個所には紛らわしい標識又は内容が含まれ、閲覧者を該ウェブサイト又はドメイン名は原告の公式又は授権ウェブサイトであると誤解させやすい。該ウェブサイトの内容、例えば「微信マーケティングプラットフォーム」、「微信取引プラットフォーム」等は原告の公式規則に許可されていない誘導行為などに関する。また、被告が2015年4月又は7月に紛争ドメイン名の登録者になった時、原告の先願商標であることを知っていたはずだが、回避せず、逆にウェブサイト内容を修正して紛らわしく使用している。紛争ウェブサイトも以下を表示している。「微信公式ウェブサイト」、「微信公式プラットフォーム」、「微信開放プラットフォーム」は、いずれも原告の公式ウェブサイトにリンクされ、複数の箇所に「ペンギンアイコン」、「QQ」及び「」商標を含む原告の各商標を使用し、複数の箇所に「公式」の文字を使用して公衆を混乱させている。

20160224061650_0050www.weixin.comウェブサイトのスクリーンショット)

専門家チームの見解

まず、原告の商標「weixin」、「微信」は、2015年から中国では誰でも周知している。原告は2004年に香港でメインボード上場している。2015年、微信とWeChatの毎月のアクティブアカウントは6.5億に達した。被告はこれに対して、微信生態圏の一員として、原告が「生命を維持するのに必要なもの」であることを明確に知っていると認めている。ところが、被告は2015年に改めてweixin.comを登録している。「UDRP方針」第2条「ドメイン名所有者の陳述責任」の規定に基づき、「ドメイン名の所有者があるドメイン名の登録を出願し、又はドメイン名の登録業者にあるドメイン名の登録を保留又は更新を請求する時、ドメイン名の登録業者に以下を陳述し保証しなければならない。…(b)ドメイン名の所有者が周知のように、ドメイン名の登録は如何なる第3者の権益を侵害又は妨害しない。…(d)ドメイン名の所有者は関連する適用可能な法律や法規に反することを知りながら該ドメイン名を使用することはない。ドメイン名の所有者はドメイン名の所有者のドメイン名登録行為が他人の権益を侵害又は妨害するか否かを判断する責任がある。」

また、WIPO第D2007-0062号事件において、専門家チームは裁決において以下のように指摘している。被告が紛争ドメイン名の従来の所有者の善意的な登録は後続の該紛争ドメイン名を取得する際の再審を免除したと反論するならば、被告は「UDRP方針」及びその目的を根本的に誤解している。「UDRP方針」の最終的な目的はドメイン名所有者が他人の商標の名誉を利用して利益を図り故意的にドメイン名を登録することを防止することである。WIPOD2004-0230号事件参照WIPO専門家の合致した見解は以下のとおりである。ドメイン名の更新は故意的登録を認定できることを意味するのではない。しかし、ドメイン名が第3者に譲渡されたらドメイン名の新規登録を意味し、前提としては故意的登録の認定日が現在のドメイン名の所有者がドメイン名を取得した日付に限定されなければならないWIPO見解」3.7条及びその引用された判例参照。「UDRP方針」の目的に基づいて考慮すると、ドメイン名の更新はドメイン名の「登録」と異なるため、ドメイン名を登録する時は故意がなかったが後続の使用において故意を持つ被告に規制範囲から排除される。しかし、善意的な初期登録による権益には期限がなければならず、即ち、初期登録期間満了後の長い期間において依然として所有権又は「所有状態」の継承者を保護してはならない。WIPOD2004-0338号事件参照。専門家チームは、「UDRP方針」第2条には、商標に関するドメイン名を登録し使用することが「UDRP方針」に反することを回避するために、ドメイン名の所有者は一定の程度において善意的な努力の義務を果たさなければならないことを明らかに要求していることに注目した。WIPOD2006-0964号事件参照。しかし、本事件の被告は該紛争ドメイン名を登録し使用する前に第3者の権利が存在するか否かを確認したことを証明できなかった。このように、本事件の被告は、従来の所有者の紛争ドメイン名に対する善意的な登録に基づき、被告が該紛争ドメイン名に対して権利又は合法的な利益を有することを証明できるより多くの証拠を提供しなくてはならない。被告が、他人の商標に関するドメイン名の登録と使用が「UDRP方針」に反する可能性を回避するために、一定の程度の善意的な努力を果たしていない場合、本案の被告は、自分が従来の所有者の該紛争ドメイン名の継続使用者であるため該紛争ドメイン名に対して合法的な権利を有することを主張することもできない。上記のように、本事件の被告は、紛争ドメイン名を登録し使用する前に第3者の権利が存在したのか否かを確認したことを証明することができなかった(注釈⑧参照)。証拠によると、被告は原告の商標「weixin」を明らかに知っていたにも関わらず紛争ドメイン名を改めて登録しており、これにより故意がある登録を構成する。

更に、Domain Tools(著者注釈:ドメイン名情報及び履歴情報の検索ツール)及びThe Way Back Machine(著者注釈:時間逆流ウェブサイト又はインターネットファイルInternet Archive、インターネットのウェブサイト履歴を提供するウェブページ)により取得されたドメイン名の報告によると、最初(2000年)の登録者はHai Shen Yangであり、その後(2007年から2010年までの間)登録者は3回変更し、それ以降、2011年にはZhu Fang、2015年4月にはSun Li Bin、2015年6月にはLi Zhuとなり、最終的には被告に移転された。紛争ドメイン名ウェブページの2011年1月における表示のスクリーンショットでは中国語の名称は「威信」であり、2014年4月11日のスクリーンショットでようやく「微信」に変更されている。

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(The Way Back Machineウェブサイト2011年1月25日スクリーンショット)

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(The Way Back Machineウェブサイト2014年4月11日スクリーンショット)

最後に、故意的使用について、申し立て書にも、ウェブサイトのコンテンツを変更すること、該ウェブサイトが原告の公式ウェブサイトであると誤解させること、該ウェブサイトの複数個所に「ペンギンのアイコン」、「QQ」及び「」を含む原告の商標を使用したこと、「公式アカウントホスティングプラットフォーム」の複数の箇所に原告の商標を表示したこと、及び金銭によりユーザーをある公式アカウント及びユーザー共有に注目するように誘導したこと等を含む被告の故意的使用が詳細に挙げられている。ウェブサイト全体の内容を見ると、専門家チームは故意的使用が成り立つと判断する。(また、前述のように、著者は、紛争ドメイン名のウェブサイトはいまだに使用されていることに気が付いた。具体的な使用状況についいては要件2の記述を参照。)

専門家チームの少数意見によると以下のように判断している。被告が故意的に使用したか否かは、本事件の主な論争点ではない。それは、「合法的な権利」と「登録の故意」の問題を解決しなければ、故意的使用と認定しても、紛争ドメイン名の移転を裁決する条件を具備しないからである。その他の法律関係の視点から、被告が紛争ドメイン名を使用しており、その商標権利への侵害を構成し、又は不正競争を構成すると主張する場合、原告は商標法又は不正競争防止法に基づいて訴訟を提起して権利を主張することを検討することができる。

注 釈:

  • アジアドメイン名紛争解決センターの公式サイトへのリンク参照

http://www.adndrc.org/diymodule/docUDRP/HK-1600816_Decision.pdf

②ICANN公式サイトへのリンク参照

https://www.icann.org/resources/pages/providers-2012-02-25-zh

③《WIPO見解(第1版)》WIPO公式サイトへのリンク参照

http://www.wipo.int/amc/en/domains/search/oldoverview/ ;

《WIPO見解》はバージョン2.0(第2版)に更新され、WIPO公式サイトへのリンク参照

http://www.wipo.int/amc/en/domains/search/overview2.0/

④原文:“Registration of a domain name before a complainant acquires trademark rights in a name does not prevent a finding of identity or confusing similarity. The UDRP makes no specific reference to the date of which the owner of the trade or service mark acquired rights…」

⑤原文:“The existence of a disclaimer cannot cure bad faith, when bad faith has been established by other factors. A disclaimer can also show that the respondent had prior knowledge of the complainant’s trademark.」

⑥原文:“This is typically explained by UDRP panels with reference to the probability of Internet user‘initial interest confusion’.」

⑦原文:“While the transfer of a domain name to a third party does amount to a new registration, a mere renewal of a domain name does not amount to registration for the purposes of determining bad faith. Registration in bad faith must occur at the time the current registrant took possession of the domain name.」

⑧原文:“The Respondent, however, fundamentally misperceives the Policy and its objectives in asserting that a previous registrant’s good faith registration of a domain name immunizes one who subsequently acquires the domain name from further scrutiny. The overriding objective of the Policy is to curb the abusive registration of domain names in circumstances where the registrant is seeking to profit from and exploit the trademark of another. Match.com, LP v. Bill Zag and NWLAWS.ORG, WIPO Case No. D2004-0230. The consensus view of WIPO Panelists is that, while a renewal of a domain name does not amount to registration for purposes of determining bad faith, the transfer of a domain name to a third party does amount to a new registration, requiring the issue of bad faith registration to be determined at the time the current registrant took possession of the domain name. See WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions, § 3.7, and cases cited therein.」“While a renewal is not considered equivalent to a 「registration」 in the context of the objectives of the Policy, and thereby insulates a respondent who did not register a domain name in bad faith but subsequently uses it in bad faith, the benefit of an original good faith registration should not be perpetual to the point where it can cloak successors in title and successors in 「possession」 long after the original registration would have expired. See PAA Laboratories GmbH v. Printing Arts America, WIPO Case No. D2004-0338. The Panel notes that paragraph 2 of the Policy implicitly requires some good faith effort to avoid registering and using domain names corresponding to trademarks in violation of the Policy. See Media General Communications, Inc. v. Rarenames, WebReg, WIPO Case No.D2006-0964. But the Respondent has not indicated that it explored the possibility of third-party rights in any way before registering and using the disputed domain name. 」“In view of the foregoing, it follows that the Respondent cannot rely on a previous registrant’s good faith registration of the disputed domain name without more to establish that the Respondent possesses rights or legitimate interests in the disputed domain name. Nor can the Respondent rest its claim of legitimacy on a continuation of the previous registrant’s use of the domain name, in the absence of a good faith effort by the Respondent to avoid registering and using a domain name corresponding to the trademark of another in violation of the Policy. As noted above, the Respondent does not indicate that it explored the possibility of third-party rights in any way before registering and using the disputed domain name.」

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